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マイコプラズマ感染症
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Mycoplasma lipid-antigens
   
 


“かぜ”症状で発病する感染症の病原菌で、肺炎では3番目、急性気管支炎では1番目に多いとされています。特に、肺炎は日本人死因の第3位を占め、生活習慣病に次ぎ重大な社会問題ともなっています。

従来は効果のあった抗生物質に対して耐性菌が多く出現してきている事などから、確実に、早期に診断-治療することがますます重要になってきています。2000年にマクロライド系抗生物質への耐性菌株が日本の研究者により分離されて以降、耐性率は上昇を続けている。世界的も増加を続けています。

2011年は6月頃より患者数の増加が報告され、過去10年間で最多の感染者数が報告されています。報告数増加の要因は、迅速診断キットの普及や報告対象になっている基幹定点病院に入院を要するような重症例の増加、更に原因菌の耐性化などが挙げられています。

さらに、マイコプラズマ感染症の特徴は、感染したヒトの25%に、肺以外の疾患、つまり、皮膚炎腎炎関節炎、また神経症状を呈する髄膜炎脳炎のような多彩な疾患の原因になり得ることです。経過もさまざまであり、急性期のみの症状から、難病(喘息・リウマチ性疾患膠原病神経疾患)も含む慢性炎症性疾患までの幅広い病像を呈するため、原因の特定が困難な場合も少なくありません。難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象である130疾患においても、多くの疾患で、マイコプラズマ感染との関連が疑われています。

したがって、慢性化し難病に至る疾患に関連しているマイコプラズマ感染を、いかに正確に、早期に、発見・診断し、有効な抗生剤療法の適応患者さんを治療に繋げられるかが非常に重要なポイントとなります。


マイコプラズマは細胞壁を欠く細菌であり球形(125~250nm)から繊維状(150μm)と多様な形態を示し、細胞外で自己増殖可能な最小の細菌である。その増殖にはコレステロール長鎖脂肪酸を要求する。ウイルスと異なり、人工の無細胞培地で増殖できる最小の病原微生物。

病原体は、粘膜表面の細胞外で増殖する。増殖の結果、気管、気管支、細気管支、肺胞などの気道粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮が顕著に破壊され、粘膜の剥離、潰瘍の形成がみられる。確定診断の遅れにより重症化することもある。成人は重症化リスクが高く重症化すると胸水貯留、呼吸不全を引き起こす可能性がある。

普通の細菌と異なり、細胞壁を持たず、 3層の限界膜をもっており、ペニシリン系やセフェム系などの抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が有効。

マイコプラズマ肺炎は小児・若年成人に多発。乳幼児にも感染するが、肺炎になることは少なく、風邪や上気道炎で終わることが多い。5歳以上になると肺炎症状がでてきます。感染後に無症状の保菌状態が続く。感染後、免疫は長続きしない。したがって、再感染する。

感染力は強く、マイコプラズマ肺炎患者の気道分泌物中にマイコプラズマが咳によって飛沫となって経気道感染をおこす。1~2 m程度の距離で人から人に飛沫感染するために、学校や職場などの狭い範囲で流行がみられる。

病原体が気道粘液(痰)に排出されるのは発症前2~8日から起こり、臨床症状発現時に最大となり、高いレベルの排出が1週間程度続き、徐々に減少しながら4~6週間以上病原体の排出は継続する。

肺炎が流行する季節は秋。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では五類感染症に指定。

肺呼吸器系の症状のみでなく、発疹筋肉痛関節痛髄膜炎などの全身症状がある。また、まれではあるが、喘息神経疾患関節リウマチ症状への移行が知られているす。

難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象である130疾患のうち、多くの疾患で、マイコプラズマ感染との関連が疑われています。

1~2 m程度の距離で人から人に飛沫感染するために、学校や職場などの狭い範囲で流行がみられ、マイコプラズマ感染症の疫学調査をすることは極めて重要です。


初期症状は、風邪症候群様の症状を呈し、発熱疲労感頭痛のどの痛み消化器症状発疹など。症状は個人差が大きく咳は、発症初期は乾いた咳で有るが、時間の経過と共に咳は強くなり、解熱後も1ヶ月程度続く。年長児や青年では、後期には湿性の咳となることもある。
合併症として中耳炎関節炎無菌性髄膜炎脳炎肝炎膵炎心筋炎溶血性貧血ギラン・バレー症候群スティーブンス・ジョンソン症候群などがある。
【潜伏期】
潜伏期は2~3週間程度。潜伏期とは体の中にマイコプラズマが侵入してから症状が出てくるまでの期間。マイコプラズマ感染症の人と接触してもすぐに症状が出てくるのではなく、2~3週間の間をおいて症状が出てくる。
【症状】
発熱で発症し、1~2日遅れて咳が出てきて、だんだん強まっていく、というのが典型的な経過。マイコプラズマ肺炎の症状としては,初期症状は普通の風邪と変わりないことが多く、咽頭痛全身倦怠筋肉痛発熱が最も多い。その後に、自制できないほどの頑固な咳が続くことが多いのが特徴で。 咳は最初は空咳、だんだん痰がからんでくる。痰は少ないかあっても膿性ではない。感染を受けた人すべてに発症するわけではなく、約3~10%に発症するとされている。
【マイコプラズマ肺炎を疑う所見】
①家族内にマイコプラズマ感染症の人がいる場合
②保育園や幼稚園でマイコプラズマ感染症が流行している場合
③長期間せきが続く場合
④喘息児が気管支拡張薬などの治療にもかかわらず喘鳴が長引いたり、発作を繰り返す場合
⑤セフェム系抗生物質を使用しても発熱や咳嗽がなかなか治らない場合
【マイコプラズマ肺炎の診断】
診断は、抗マイコプラズマ抗体の上昇で確定診断になる。抗マイコプラズマ抗体の特異性が低いためより特異性の高い診断法が望まれている。胸部X線写真は区域性の所見を示さず、すりガラス状の間質性陰影を見ることが多い。飛沫感染するので家庭、学校、職場で流行しますので、流行が診断の助けにもなる。
【検査】
検査は、血液検査では寒冷凝集反応抗マイコプラズマ抗体の上昇を見る。(IDWR:感染症の話)
肺炎があるかどうかは胸部XPで確かめる。胸部XPの陰影で(非定型肺炎)、マイコプラズマ肺炎かどうかの予測はつくが、中にはウイルス感染でも同じような像を呈することがある。白血球数は正常のことが多いが、中には10000~15000程度の軽度の上昇を示すこともある。ルーチン検査の喀痰培養検査でも検出できないので参考にならない。CRPは軽度上昇を示すことが多いが、陰性のこともある。
【合併症】
喘息の既往のある子供は喘息発作が生じたり悪化したりするので注意が必要。高熱のためにけいれんが誘発されることもある(熱性けいれん)。発疹が出現すること、中耳炎が合併することもある。肺炎マイコプラズマは心筋炎、心外膜炎腎炎中耳炎鼓膜炎多形紅斑(かなり多い)、ステーブン・ジョンソン症候群髄膜炎脳炎多発神経炎寒冷凝集素症血小板減少症など多彩な病変を起こすこともある。
【治療】
マイコプラズマが細胞壁を持たないのでβ-ラクタム系やアミノグリコシド系等の細胞壁合成阻害薬は無効である。マクロライド系、テトラサイクリン系、ケトライド系を第一選択薬とする。 マクロライド系の抗生物質、エシノール、クラリス、ジスロマックなどから選択し。最近、耐性菌の出現が問題となってきている。
マイコプラズマには通常外来で処方されることの多いセフェム系抗生物質が効かない。逆にマイコプラズマに効果のあるマクロライド系抗生物質は細菌に対する効きが弱い。そのために、症状を起こしている病原体がマイコプラズマなのか、細菌なのか、ウイルスなのかはお子さんの治療を行っていく上で問題となる。
【予防】
患者の鼻やのどからの分泌物に触れたり、飛沫を吸い込だりすることによる感染がありますので、手洗いやうがいも有効。また、患者との濃厚な接触を避けることも大事。発病前1週間~発病後10日程度が、感染力がある期間といわれている。登校登園については急性期が過ぎて症状が改善し、全身状態の良いものは登校可能。
【経過】
一般に予後は良好。しかし、咳嗽が長引くことが多く、1ヶ月以上続くことも珍しくありませんし、レントゲンの肺炎像が改善するのに1~2ヶ月かかることもあります。一度かかっても再度発病することがあり、一生免疫ができるとは限らない。しかし、咳嗽が長引くことが多く、1ヶ月以上続くことも珍しくなく、レントゲンの肺炎像が改善するのに1~2ヶ月かかることもある。一度かかっても再度発病することがあり、一生免疫ができるとは限らない。
経過中に発熱が続き、嘔吐、頭痛等がみられる場合は髄膜炎を合併を考える。他に中耳炎、尿道炎、肝炎などが報告されている。成人より小児に合併症の頻度が多いとされている。


肺炎の10~20%程度がマイコプラズマが原因によって起こるといわれている、5~14歳の年齢に多いといわれているが、成人にも乳幼児にもマイコプラズマは感染する。家族の誰かがマイコプラズマに感染すると家族中にうつってしまう。
マイコプラズマ感染症となったこどもの25%が、吐き気嘔吐下痢などの消化器症状を起こす。また、耳の痛みを訴える者もいて、中耳炎鼓膜炎などの耳の炎症を起こしている場合る。また、筋肉痛関節痛発疹などが出現する場合もあります。合併症として、鼻炎無菌性髄膜炎脳炎肝炎膵炎溶血性貧血心筋炎関節炎ギラン・バレー症候群スティーブンス・ジョンソン症候群などが見られることもある。
小児の肺炎では、経験的治療は大きく異なってくる。その違いは肺炎の起炎菌の違いによるものである。新生児を除く乳幼児では、肺炎の3大起炎菌といえるのはインフルエンザ桿菌、肺炎球菌、モラキセラ・カタラーリスである。成人と異なりクレブシエラ属や緑膿菌は少ないため、第3世代セフェムよりも抗菌スペクトラムの狭いペニシリン系抗生物質を選択するのが一般的。
基礎疾患や障害のある患児では、その疾患によって肺炎の起炎菌に特徴がある。また、過去の細菌検査の結果も起炎菌推定の助けになる。いずれの場合にも、喀痰培養の結果や(マイコプラズマの場合)血清診断の結果がでれば、それにあわせて最適の抗菌薬に変更していくことが必要。
学童以上の年齢では肺炎マイコプラズマによる肺炎が多くなる。細菌性肺炎との鑑別はX線像ではまず不可能であり、血液所見(好中球増加の有無、C反応性蛋白上昇の有無など)や全身状態、気道症状の程度などが参考となる。マイコプラズマにはβラクタム系の抗菌薬が無効であるが、テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシンなど)やニューキノロン系抗菌薬は副作用の問題で小児には投与しにくい、あるいはできないため、マクロライド系抗生物質を選択する。


肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )は、急性肺炎の主要な病原細菌である以外に、喘息慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪に関連する慢性感染が指摘されている。
気管支喘息(Bronchial Asthma)とは、アレルギー反応や細菌・ウイルス感染などが発端となった気管支の炎症が慢性化することで気道過敏性の亢進、可逆性の気道狭窄をおこし、発作的な喘鳴、咳などの症状をきたす呼吸器疾患。
アトピー型の喘息患者が発作を引き起こすのはI型アレルギーにより、その誘因は細菌・ウイルス感染、過労、ハウスダスト(埃・ダニ・花粉・カビなど)・食物・薬物などのアレルゲン、運動、タバコ、アルコール、気圧変化などさまざまです。
従来から、急性肺炎の病原診断の際、血清抗体の上昇は、特異性が高く、M. pneumoniae 診断に頻用されてきた。最近のアジアの多施設調査による報告でも、1,374人のペア血清の得られた市中肺炎において、M. pneumoniae は12%の肺炎に関与したとの数値が示されている。
一方、M. pneumoniae による慢性感染症や不顕性感染症の実態は、その診断法を含め、いまだ不明な点が多い。M. pneumoniae は気道上皮細胞における表層感染症を起こすと考えられているが、喘息やCOPDの患者においては、慢性感染を起こす病原細菌として、細胞内寄生体の肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae )と合わせ論じられることが多い。
すでに診断法として確立したM. pneumoniae やC. pneumoniae のPCR法であるが、気道検体でM. pneumoniae 、C. pneumoniae 抗原が陽性と判定されても、活動的な病原因子が存在しているのか、断片にすぎないのかは不明であり、特に、気道生検の材料を用いた成績では、PCR法による判定と、培養法、血清抗体の検査法との相関がみられない現状がある。
喘息患者では、非喘息患者と比べて、M. pneumoniae C. pneumoniae 感染症の頻度が高く、感染のある患児では、その後の喘鳴の頻度が高くなると報告されている。
Ngeow YF, et al ., Int J Infect Dis 9: 144-153, 2005
Esposito S, et al ., Eur Respir J 16: 1142-1146, 2000
IASR 28-2 M. pneumoniae,  The Role of Mycoplasma pneumoniae Infection in Asthma
マイコプラズマと喘息の関連や、抗菌剤治療の有効性についての報告
Atkinson TP, Duffy LB, Pendley D, Dai Y, Cassell GH. Deficient immune response to Mycoplasma pneumoniae in childhood asthma. Allergy Asthma Proc. 30:158-165. (2009)
Ou CY, Tseng YF, Chiou YH, Nong BR, Huang YF, Hsieh KS. The role of Mycoplasma pneumoniae in acute exacerbation of asthma in children. Acta Paediatr Taiwan. 49:14-18. (2008)
Biscardi S, Lorrot M, Marc E, Moulin F, Boutonnat-Faucher B, Heilbronner C, Iniguez JL, Chaussain M, Nicand E, Raymond J, Gendrel D. Mycoplasma pneumoniae and asthma in children. Clin Infect Dis. 38:1341-1346. (2004)


間質性肺炎(かんしつせいはいえん、interstitial pneumonia (IP))は肺の間質組織を主座とした炎症を来す疾患の総称。治療の困難な難病である。進行して炎症組織が線維化したものは肺線維症(はいせんいしょう)と呼ばれる。間質性肺炎のうち特発性間質性肺炎は日本の特定疾患。関節リウマチ全身性強皮症皮膚筋炎多発性筋炎MCTDなど線維化を来す膠原病の一症候としても間質性肺炎が出現する頻度が高い。間質性肺炎が起こる原因は多種多様ですが、代表的なものとして、マイコプラズマやウイルスによる感染、膠原病の合併症、放射腺治療の副作用、カビや石綿などの影響、 薬剤の副作用などがあげられます。
マイコプラズマ性間質性肺炎 膠原病性間質性肺炎 間質性肺炎 - Wikipedia


マイコプラズマの感染により抗核抗体が出現する事が観察されている。肺炎マイコプラズマは心筋炎・心外膜炎、腎炎、中耳炎、鼓膜炎、多形紅斑(かなり多い)、ステーブン・ジョンソン症候群、髄膜炎、脳炎、多発神経炎(ギラン・バレー症候群のページにリンク)、寒冷凝集素症、血小板減少症など多彩な病変を起こすこともある
全身性エリテマトーデス - Wikipedia
Adra AL, Vigue MG, Dalla Vale F, Ichay L, Raynaud P, Mariani A, Morin D. Favorable outcome in a case of Mycoplasma pneumoniae-associated crescentic glomerulonephritis. Pediatr Nephrol. ;25:1765-1769. (2010)



肺炎マイコプラズマも、無菌性髄膜炎の原因の一つとして重要である。マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は、名前の通り肺炎を来す代表的な真正細菌ですが、肺外合併症として脳炎を来すことがごく希(2-7%)にあります。血清マイコプラズマ抗体はPA法(主にIgM)≧320倍、CF(主にIgG)≧64倍を陽性とします。抗糖脂質抗体の関与も疑われています。髄液中のマイコプラズマ抗体が検出されることもありますが、神経症状を呈さないマイコプラズマ感染者でも陽性になることがあり解釈には注意が必要です。
IDWR感染症の話:無菌性
Tjhie JH, van de Putte EM, Haasnoot K, van den Brule AJ, Vandenbroucke-Grauls CM.
Fatal encephalitis caused by Mycoplasma pneumoniae in a 9-year-old girl.Scand J Infect Dis. 29:424-5. (1997)
Daxboeck F, Blacky A, Seidl R, Krause R, Assadian O. Diagnosis, treatment, and prognosis of Mycoplasma pneumoniae childhood encephalitis: systematic review of 58 cases. J Child Neurol. 19:865-671. (2004)
Lin WC, Lee PI, Lu CY, Hsieh YC, Lai HP, Lee CY, Huang LM. Mycoplasma pneumoniae encephalitis in childhood. J Microbiol Immunol Infect. 35:173-178. (2002)


ギラン・バレー症候群(GBS)は、急性の運動麻痺をきたす末梢神経障害であり、多くの場合(約7割)呼吸器あるいは消化器感染の後に発症する。四肢の筋力低下を主徴とするが、異常感覚を含めた感覚障害を伴うことも多い。顔面神経麻痺眼球運動麻痺嚥下・構音障害などの脳神経障害を伴うこともある。症状の極期には呼吸筋麻痺自律神経障害を呈する例もある。腱反射は低下ないし消失する。また、マイコプラズマ肺炎後のGBSでは抗galactocerebroside抗体が上昇するが、Mycoplasma pneumoniaeの菌体にはgalactocerebroside様の糖鎖構造が存在することが報告されている。
難病情報センター | ギラン・バレー症候群と急性散在性脳脊髄炎(ADEM)


脱髄疾患(demyelinating disease)とは神経疾患の一種で、有髄神経の髄鞘が障害されることで起こる疾患。
有髄神経の周りには髄鞘と呼ばれるものが取り巻いている。これを形成する細胞は、中枢神経では乏突起膠細胞、末梢神経ではシュワン細胞である。この髄鞘があるために有髄神経では跳躍伝導を行うことができるため、これが障害されることで神経伝導速度が遅くなり、多彩な神経症状が引き起こされる。
大きく分けて中枢神経系と末梢神経系の疾患がある。
 中枢神経系: 多発性硬化症視神経脊髄炎(Devic症候群)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
 炎症性広汎性硬化症(Schilder病)、感染性亜急性硬化症全脳炎(SSPE)、感染性進行性多
 巣性白質脳症(PML)、ビタミンB12欠乏症
末梢神経系:ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は炎症性脱髄疾患で、有髄神経線維のミエリンがなくなる病気。多くの場合、白質の静脈周囲、もしくは灰白質の一部に多発性の炎症性脱髄を認める。原因別に1)感染後ADEM2)ワクチン接種後ADEM3)特発性ADEMがある。1)の感染後ADEMは、発疹性ウイルス(麻疹、風疹、水痘・帯状疱疹など)、ムンプスウイルス、インフルエンザウイルスに感染した後に発症することが多いとされている。他にEBウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス等のウイルス、マイコプラズマ、キャンピロバクター、溶連菌などに引き続いて発症することもあります。一般的には気道、消化管感染症などの後に起こりますが、起炎病原体を同定できないことが多い。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM:acute disseminated encephalomyelitis)Q&A
Acute disseminated encephalomyelitis developed after Mycoplasma pneumoniae infection complicating subclinical measles infection.


筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateral sclerosis、ALS)は、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、運動ニューロン病の一種。極めて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡する(人工呼吸器の装着による延命は可能)。治癒のための有効な治療法は確立されていない。日本国内では1974年に特定疾患に認定された指定難病。公費負担の対象疾患です。
マイコプラズマ感染とALSの関連を示唆する論文
Endresen GK.  Mycoplasma blood infection in chronic fatigue and fibromyalgia syndromes. Rheumatol Int. 23:211-215 (2003)
Horner RD, Kamins KG, Feussner JR, Grambow SC, Hoff-Lindquist J, Harati Y, Mitsumoto H, Pascuzzi R, Spencer PS, Tim R, Howard D, Smith TC, Ryan MA, Coffman CJ, Kasarskis EJ. Occurrence of amyotrophic lateral sclerosis among Gulf War veterans.Neurology. 61:742-749. (2003)
Nicolson GL, Nasralla MY, Haier J, Pomfret J. High frequency of systemic mycoplasmal infections in Gulf War veterans and civilians with Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS). J Clin Neurosci. 9:525-529. (2002)
マイコプラズマ感染と多発性硬化症の関連を示唆する論文
マイコプラズマ脂質抗原 (GGPL-III=MfGL-II)



自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia, AIHA)は、赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が産生され、抗原抗体反応の結果、赤血球が傷害を受け、赤血球の寿命が著しく短縮(溶血) し、貧血をきたす病態。
基礎疾患には自己免疫疾患リウマチ性疾患リンパ増殖性疾患免疫不全症腫瘍感染症マイコプラズマ、ウイルス)などが含まれる。特発性で経過中にこれらの疾患が顕性化することがある。
マイコプラズマ感染では、発症から2~3週後の肺炎の回復期に溶血症状をきたす。血中には抗マイコプラズマ抗体が出現し寒冷凝集素価が上昇する時期に一致する。溶血は2~3週で自己限定的に消退する。まれに、重症化することがある。
溶血性貧血 (1)自己免疫性溶血性貧血 - 難病情報センター
Wilson ML, Menjivar E, Kalapatapu V, Hand AP, Garber J, Ruiz MA. Mycoplasma pneumoniae associated with hemolytic anemia, cold agglutinins, and recurrent arterial thrombosis. South Med J. 100:215-217. (2007)
Khan FY, A yassin M. Mycoplasma pneumoniae associated with severe autoimmune hemolytic anemia: case report and literature review. Braz J Infect Dis. ;13:77-179. (2009)
Lindström FD, Ståhl-Furenhed B. Autoimmune haemolytic anaemia complicating Mycoplasma pneumoniae infection. Scand J Infect Dis. 13:233-235. (1981)


マイコプラズマ感染では、発症から2~3週後の肺炎の回復期に溶血症状をきたす。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併する場合をEvans症候群と呼び、特発性AIHAの10~20%程度を占める。紫斑や粘膜出血などの出血症状が前景に立つことがある。両者の発症は同時期とは限らず、またそれぞれの経過も同じとは限らない。続発性では基礎疾患による症状所見が加わる。
溶血性貧血 (1)自己免疫性溶血性貧血 - 難病情報センター


関節炎は、関節の炎症をともなう疾病の総称です。症状には局所症状と全身症状があり、局所症状としては発赤、腫脹、圧痛、こわばり、可動域制限などが知られ、全身症状としては発熱、全身倦怠感、体重減少などがあります。
関節炎は細菌性関節炎、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風、偽痛風、乾癬性関節炎、変形性関節炎など様々な病態があります。病態ごとに診断、治療が異なります。
慢性多関節炎の早期は急性多関節炎のように見えることもあるり、このような疾患には関節リウマチSLE血管炎といった結合組織疾患も含まれます。
高齢者で頚部、肩、腰部の症状が特徴的であるリウマチ性多発筋痛症では、側頭動脈炎の合併が知られています。
マイコプラズマ感染が、リウマチ様関節炎、さらに、リウマチの原因であることがわかってきている。特に、マイコプラズマ・ファーメンタンスについてよく知られている。
Kawahito Y, Ichinose S, Sano H, Tsubouchi Y, Kohno M, Yoshikawa T, Tokunaga D, Hojo T, Harasawa R, Nakano T, Matsuda K. Mycoplasma fermentans glycolipid-antigen as a pathogen of rheumatoid arthritis. Biochem Biophys Res Commun. 369:561-566. (2008)
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Horowitz S, Evinson B, Borer A, Horowitz J. Mycoplasma fermentans in rheumatoid arthritis and other inflammatory arthritides. J Rheumatol. 27:2747-2753. (2000)
Schaeverbeke T, Gilroy CB, Bébéar C, Dehais J, Taylor-Robinson D. Mycoplasma fermentans, but not M penetrans, detected by PCR assays in synovium from patients with rheumatoid arthritis and other rheumatic disorders. J Clin Pathol. 49:824-828. (1996)
リウマチの抗菌治療


副鼻腔気管支症候群(多型滲出性紅斑・咳喘息・アトピー咳嗽)  (気管支拡張症・副鼻腔炎)  
Meyer Sauteur PM, Gansser-Kälin U, Lautenschlager S, Goetschel P. Fuchs syndrome associated with Mycoplasma pneumoniae (Stevens-Johnson syndrome without skin lesions). Pediatr Dermatol. 28:474-476. (2011)
Tsai V, Oman J. Stevens-Johnson syndrome after mycoplasma pneumoniae infection. J Emerg Med. 40(3):324-327. (2011)
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スティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症では薬剤や感染症などが契機となり、免疫学的な変化が生じ、皮膚・粘膜に重篤な病変がもたらされると推定されている。薬剤では消炎鎮痛薬、抗菌薬、抗けいれん薬、高尿酸血症治療薬などが原因となりやすい。感染症ではマイコプラズマ感染やヘルペスウイルス感染などが誘因となる。
スティーブンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症
皮膚病変:大小さまざまな滲出性(浮腫性)紅斑、水疱を有する紅斑~紫紅色斑が全身に多発散在する。紅斑は融合・拡大し、時に表皮の剝離をきたす。水疱は破れてびらんとなる。粘膜病変:口唇・口腔粘膜、鼻粘膜に発赤、水疱が出現し、水疱は容易に破れてびらんとなり、血性痂皮を付着するようになる。眼では眼球結膜の充血、眼脂、偽膜形成などが認められる。外陰部、尿道、肛門周囲にはびらんが生じて出血をきたす。時に上気道粘膜や消化管粘膜を侵し、呼吸器症状や消化管症状を併発する。
難病情報センター Japan Intactable Diseases Information Center


Yashar SS, Yashar B, Epstein E, Viani RM. Uveitis associated with Mycoplasma pneumoniae meningitis. Acta Ophthalmol Scand. 79:100-101. (2001)
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Milla E, Zografos L, Piguet B. Bilateral optic papillitis following mycoplasma pneumoniae pneumonia. Ophthalmologica. 212:344-346. (1998)


血管炎による脳梗塞
血管炎による脳梗塞が知られている。血管炎としては抗リン脂質抗体症候群全身性エリテマトーデスによるものが若年性脳梗塞の原因として有名せある。
抗リン脂質抗体症候群
原発性抗リン脂質抗体症候群とSLEなどに合併する続発性抗リン脂質抗体症候群が知られている。全身の血管に血栓が形成されるが動脈にも静脈にも血栓形成が起こりうるのが本疾患の特徴と考えられている。動脈系血栓の約90%が脳血管においておこるとされている。
原発性脳血管炎(PACNS)
原発性脳血管炎(PACNS)は中枢神経(CNS)に限局した血管炎であり、主に脳や脊髄の軟膜および脳実質内の長径200~300μmの細動脈から中動脈レベルの血管が障害される。原因ははっきりとはしておらず、マイコプラズマ、水痘帯状疱疹ウイルスなどの感染を契機に血管炎を引き起こす例や血管にアミロイド沈着などが認められ複数の原因の関与が示唆されている。症状の進行は一般的に亜急性の経過を辿ることが多いが、痙攣などで急性に発症する例や頭痛が持続する慢性の経過を辿ることもある。
大動脈炎症候群(高安動脈炎)
大動脈炎症候群(高安動脈炎)は大動脈およびその基幹動脈、冠動脈、肺動脈に生じる大血管炎である。若年女性の微熱、めまい、炎症反応高値、血管雑音などが特徴とされている。特異的な血液、生化学検査はなく、CRPや血沈、白血球数、ガンマグロブリン、貧血の有無から大動脈炎症候群の活動性の評価を行う。
神経ベーチェット病
神経ベーチェット病はベーチェット病の約10~20%に認められる。約2~5倍男性に多い。20~40歳が好発である。神経症状は発症後3~6年後に出現する(ベーチェット病診断後)ことが多いが、神経症状が初発となる場合もある。神経ベーチェット病の分類は実質性病変(脳幹、大脳、脊髄病変)80%と非実質性病変(血管病変、動脈瘤など)20%に分かれ、実質性病変はさらに急性型、慢性型に分かれる。
肥厚性硬膜炎
肥厚性硬膜炎は様々な原因で脳や脊髄の硬膜が肥厚し、病変部位に応じて頭痛や脳神経麻痺、痙攣や脊髄圧迫症状など様々な症状きたす症候群である。造影CTや造影MRIにて造影効果を伴う硬膜の肥厚が認められる。原因としては感染症の続発やANCA関連血管炎症候群、IgG4関連多臓器リンパ増殖症候群(IgG4+MOLPS)などの報告がある。治療はステロイドが主体となっている。


マイコプラズマ肺炎後に川崎病を併発した3例
Mycoplasma infection and Kawasaki disease.


急性心筋炎は、無症状の場合もあるが、多くは感冒様症状 (かぜ症候群) や消化器症状などの前駆症状を伴う。前駆症状の1~2週間後に、胸痛、心不全症状、ショック、不整脈などの症状を呈する。
心筋炎は、感染症、中毒あるいは原因不明の心筋の炎症性変化。無症状のものから発熱頻脈呼吸困難などの臨床症状を示すものまである。特に急性心筋炎(acute myocarditis)は、特異的所見に乏しく、急性の転帰をたどることから、臨床上重要。
マイコプラズマ感染の合併症として中耳炎、関節炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、心筋炎、溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などがあります。


 慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)は、原因不明の強度の疲労が長期間(一般的に6ヶ月以上)に及び継続する病気である。患者が訴える主な症状は、身体及び思考力両方の激しい疲労と、それに伴い、日常生活が著しく阻害されることである。
 長期間の疲労感の他に次の症状等を呈する。微熱 ・咽頭痛 ・頸部あるいはリンパ節の腫張・原因不明の筋力低下。羞明 ・思考力の低下・関節障害 ・睡眠障害。
 原因不明の疾患で、通常、血液検査等も含む全身の検査を受けても他の病気が見つからず、精神疾患も当たらない場合に疑われる(除外診断)病気である
 アメリカ疾病予防センター (CDC) によると、完治は希で5%~10%であるものの、治療により改善したり、ある程度回復するとされている。日本では人口の0.3%にあたる約38万人がCFSを罹患していると推定されているが、認知度の低さにより、適切な診断を受けていないか、うつ病・神経症・更年期障害・自律神経失調症等に誤診されている患者が多いと思われる。よく間違われることであるが、疲労が蓄積された慢性疲労とは別のものである。
 CFS患者の症状と湾岸戦争症候群(GWS)の症状が、酷似していると報告されている。湾岸戦争症候群(GWS)の原因の一つが、マイコプラズマといわれている。患者の約半数に、マイコプラズマの抗体が見つかっている。
 感染症起因の慢性疲労症候群の原因としてマイコプラズマがあり、臨床医のための臨床症例定義とガイドライン(カナダの合意文書)では、マイコプラズマの診断と抗菌剤治療が組み込まれている。
Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome:A Clinical Case Definition and Guidelines for Medical Practitioners (An Overview of the Canadian Consensus Document)
Mycoplasma blood infection in chronic fatigue and fibromyalgia syndromes
High prevalence of Mycoplasma infections among European chronic fatigue syndrome patients. Examination of four Mycoplasma species in blood of chronic fatigue syndrome patients.


膠原病 (connective tissue disease) とは、全身の複数の臓器に炎症が起こり、臓器の機能障害をもたらす一連の疾患群の総称。
典型的な症状として発熱・皮疹・倦怠感・関節痛・関節炎・筋肉痛・内臓病変・レイノー現象などがあげられ、'女性に多いのも特徴。
この名称は1942年にクレンペラーが提唱した名称。クレンペラーは全身性エリテマトーデス、全身性硬化症の研究から、病態の主体は結合組織と血管にあると考え、collagen-vascular disease と命名した。これが膠原病と翻訳された。
類似疾患概念に、自己免疫疾患、リウマチ性疾患、結合組織疾患があるが、膠原病はこの3つが重なった位置にあるとされる。
病態としては、血液中にある抗体が細胞核など自己の抗原と反応をして、免疫複合体を形成しつつ、組織に沈着したり、組織を攻撃することで発病すると考えられている。
慢性に経過し、寛解と再燃を繰り返しながら進行することがある。多くの場合に自己免疫疾患としての機序が関与していると考えられている。
遺伝的要因と環境要因が発症に関与するとされる。
完全な病態の解明は、未だ成されてないが、微生物感染(マイコプラズマ、クラミジアなど)で、類似の症状を呈することがあり、病因としての検査や鑑別診断が重要。リウマチ熱など、古典的膠原病に分類されていたが、原因が判明したため、現在は膠原病から外されている。
古典的膠原病
関節リウマチ (rheumatoid ahthritis; RA)
全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus; SLE)
強皮症 (Scleroderma)
皮膚筋炎 (dermatomyositis complex; DM) / 多発性筋炎 (polymyositis; PM)
結節性多発性動脈炎 (polyarteritis nodosa; PN)
混合性結合組織病 (mixed connective tissue disease; MCTD)
その他の膠原病・膠原病類縁疾患
シェーグレン症候群 (Sjögren syndrome; SjS)
顕微鏡的多発血管炎 (microscopic polyangitis; MPA)
Wegener肉芽腫症 (Wegener's granulomatosis; WG)
アレルギー性肉芽腫性血管炎 (allergic granulomatous angitis)
過敏性血管炎 (hypersensitivity angiitis)
ベーチェット病 (Behcet's syndrome[disease])
コーガン症候群 (Cogan's syndrome)
側頭動脈炎 (temporal arteritis; TA)
成人スティル病 (adult-onset Still's disease; AOSD)
リウマチ性多発筋痛症 (polymyalgia rheumatica; PMR)
線維筋痛症 (fibromyalgia syndrome; FMS)


全身性エリテマトーデス(全身性紅斑性狼瘡: systemic lupus erythematosus; SLE)は、全身の臓器に原因不明の炎症が起こる、自己免疫疾患の一種である。膠原病の1つとして分類されている。
また、トリパノソーマやマイコプラズマの感染により抗核抗体が出現する事が観察されている。
CNSループスと呼ばれ、うつ病を起こしたり、痙攣を起こしたり、髄膜炎をおこしたり、そのほかの精神神経症状、脳血管障害による症状などありとあらゆる中枢神経症状がこの疾患そのものによって起きうる。
顔面以外の皮疹については多形滲出性紅斑と表現する。いっぽう血管炎を合併すると蕁麻疹紫斑皮膚潰瘍がおこりうる。発熱、易疲労感が見られる。関節リウマチと似た全身性、対称性の関節炎がおこるが、リウマチでみられるような関節破壊は起こさない。視神経が傷害され急に失明することもある。初期症状は不眠や集中力低下とも言われるが多彩で一言で言い切れるものではない。急性の経過、慢性の経過、ありとあらゆることが起きうる。ループス頭痛(lupus headacheと英語で呼ぶことが多い)と呼ばれる頭痛も起こす。多発単神経炎がおきうるほか、急性炎症性多発性根神経炎としてギラン・バレー症候群のような症状を呈することもある。横断性脊髄炎も有名な症状であるが抗リン脂質抗体症候群と関連した病態である。漿膜炎のひとつとしての胸膜炎は頻度が高い。いっぽう、通常自己免疫疾患にみられやすい間質性肺炎や肺高血圧の頻度はあまり高くない。漿膜炎としての心外膜炎や、リーブマン・サックス心内膜炎がおこるほか、心筋炎もおこりえるとされる。ループス腎炎と呼ばれ、腎不全の原因となりえるため治療法が存在しなかった時代には最大の死因であった。症状としてはタンパク尿や浮腫(むくみ)が多く、血尿からはじまることはまれである。まるでさまざまな他の腎疾患(膜性増殖性糸球体腎炎膜性腎症など)をまねたかのような多彩な病像を呈する上、その疾患経過は予測不能である。血小板・赤血球・白血球のいずれの値も低下する汎血球減少を呈する。全身に出血斑が生じたり、貧血の原因となったり、重篤な感染症の原因となったりする。凝固能異常は通常抗リン脂質抗体症候群または血小板減少(この症状のみが先行する時は、特発性血小板減少性紫斑病 idiopathic thrombocytopenic purpra: ITPと診断される事がある)が原因で、血液がかたまりやすくなる(そのため肺血栓塞栓症、脳梗塞などの原因となる)ほか、抗リン脂質抗体症候群は習慣性流産の原因となる。赤血球減少(貧血)は溶血性貧血であり、自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia: AIHA)と呼ばれる。ITPとAIHAの合併する状態をエヴァンズ症候群と呼ぶが、実は本疾患の先行症状である事が多い。
全身性エリテマトーデス - Wikipedia


マイコプラズマによる尿道炎の症状はクラミジア性尿道炎と類似している。
マイコプラズマファーメンタンスは、尿道炎のみでなく、慢性疲労症候群リウマチ様関節炎筋委縮性側策硬化症などの原因になると報告されている。
High prevalence of Mycoplasma infections among European chronic fatigue syndrome patients. Examination of four Mycoplasma species in blood of chronic fatigue syndrome patients.
Gil C, Rivera A, Bañuelos D, Salinas S, García-Latorre E, Cedillo L. Presence of Mycoplasma fermentans in the bloodstream of Mexican patients with rheumatoid arthritis and IgM and IgG antibodies against whole microorganism. BMC Musculoskelet Disord. 10:97 (2009).
Nicolson GL, Nasralla MY, Haier J, Pomfret J. High frequency of systemic mycoplasmal infections in Gulf War veterans and civilians with Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS). J Clin Neurosci. 9:525-529. (2002)


マイコプラズマがHIV感染症を悪化させることや、マイコプラズマが免疫不全の原因になることなどが報告されている。
Lo SC, Tsai S, Benish JR, Shih JW, Wear DJ, Wong DM. Enhancement of HIV-1 cytocidal effects in CD4+ lymphocytes by the AIDS-associated mycoplasma. Science. 251:1074-1076. (1991)
Blanchard A, Montagnier L. AIDS-associated mycoplasmas. Annu Rev Microbiol. 48:687-712. (1994)
Poulin SA, Perkins RE, Kundsin RB. Antibiotic susceptibilities of AIDS-associated mycoplasmas. J Clin Microbiol. 32:1101-1103. (1994)


アレルギー性疾患は、外部からの抗原に対し、免疫反応が起こる疾患。ただしその抗原は通常生活で曝露される量では無害であることが多く、不必要に不快な結果をもたらす免疫応答が起こっている状態といえる。(抗体が上昇するなど免疫応答があるからといって症状が出現するとは限らない。)
アレルギーとは、免疫反応が、特定の抗原に対して過剰に起こることをいう。免疫反応は、体にとって不可欠な生理機能であり、外来の異物(抗原)を排除するために働いている。抗原としては、マイコプラズマなどの微生物や、化学物質など、単一ではなく多様性がある。
アレルギーが起こる原因は、生活環境のほか、抗原に対する過剰な曝露、遺伝などが原因として考えられている。
その機序は同一であると考えられているが、自己免疫疾患は、自己の持つ抗原に対して免疫反応が起こる疾患である。内因性のアレルゲンによるアレルギー反応が病態となっていると考えられている点が、アレルギーと異なる。
アレルギーは、その発生機序により大きく I から V 型に分類(クームス分類)されている。
I型アレルギー
代表的な疾患としては、蕁麻疹、PIE症候群、食物アレルギー、花粉症、アレルギー性鼻炎気管支喘息アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーショックなど。
II型アレルギー
代表的な疾患としては自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、不適合輸血、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、悪性貧血、リウマチ熱、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、橋本病など。
III型アレルギー
代表的な疾患としては血清病、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)、急性糸球体腎炎関節リウマチ、過敏性肺臓炎、リウマチ性肺炎多発性動脈炎アレルギー性血管炎シェーグレン症候群など。
IV型アレルギー
代表的な疾患としては接触性皮膚炎(いわゆる「ウルシかぶれ」は「アレルギー性接触皮膚炎」の一種である。)ツベルクリン反応、移植免疫、腫瘍免疫、シェーグレン症候群、感染アレルギー、薬剤性肺炎、ギラン・バレー症候群など。
V型アレルギー
代表的疾患はバセドウ病など。
アレルギー疾患の医療を行うには、アレルギー疾患の鑑別のための問診、アレルゲン曝露から発症までの時間経過、症状の持続時間、全身性に症状があるのか、局所のみなのか、既往歴や家族歴があるのかといった点に注目すると整理しやすいといわれている。
気管支喘息と副鼻腔炎といったようにアレルギー性疾患は合併することが多く知られている。特に呼吸器系のアレルギー性疾患は合併率が非常に高いと言われている。