基本技术
マイコプラズマ脂質抗原に関する技術
マイコプラズマ脂抗原を用いた診断-予防-治療に関する事業を行います。松田和洋らは、マイコプラズマの細胞膜脂質抗原に着目し、脂質抗原の構造を解明し、化学合成に成功しています。
すでに、この脂質抗原を用いて、マイコプラズマ感染による抗体価の変動を定量的に測定する方法を確立しています。
この技術は、マイコプラズマ感染症によって引き起こされる喘息・神経疾患・リウマチ性疾患などに対して、革新的な診断-予防-治療システムの構築に貢献し、世界展開できる技術になります。
マイコプラズマという微生物のユニークで特異的な脂質抗原は、マイコプラズマ感染症の病態解明や、治療ワクチン・抗体医薬・免疫療法など治療薬開発の重要な手がかりになります。
この診断法は、臨床現場での診断薬であるだけでなく、ワクチン開発を行う際の高感度の評価系でもあります。マイコプラズマ脂質抗原の免疫活性などの生理活性についての基礎研究も進めており、ワクチンへの応用についての知見が蓄積されてきています。
世界に類を見ない技術であり、優れた診断法を確立し、さらに、予防ワクチンおよび治療ワクチン関連企業への提携を図っております。
このような、合成脂質抗原を用いて病原微生物のワクチンを作製するという方法は、世界に類を見ない新技術であり、世界に発信できます。
病原微生物に対する脂質抗原を用いたプラットフォームテクノロジー
マイコプラズマ脂質抗原の研究成果に基いて、他の病原微生物を含めた診断-予防-治療の総合的システムを確立することを目指します。
ワクチンは、伝染病を予防、排除し、その結果、生活の質を向上させることのできる最も効果的なツールであり、最終的には、安全で有効なワクチンを開発することにより、さまざまな感染症の予防を目指します。
他の病原微生物とは、マイコプラズマ各種、結核菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、レジオネラ菌、クラミジア各種などです。
現在、ワクチン接種の対象疾患は、従来から対象となっている急性の感染症だけでなく、急性・慢性の新しい感染症、癌(腫瘍の免疫治療)、自己免疫疾患、およびアレルギー疾患などに広がっており、創薬分野でワクチン開発の役割はますます重要になってきています。
癌の分野では、胃癌の原因であるピロリ菌や、子宮頸癌の原因であるパピローマウイルスのように、癌と微生物の関連が明らかになり、除菌や予防ワクチンという新しい予防法が行われるようになり、急速に普及しています。
これまでの国内外の研究者の研究から、微生物と免疫反応を引き起こす疾患との間には密接な関連があると予想されます。特に、微生物の脂質成分には、lipopolysaccharides (LPS)、lipoteichioic acids (LTA)およびlipoarabinomannan (LAM)のような強い免疫活性化活性があります。したがって、この脂質抗原の構造的な分析を行うことは重要です。
私たちは、マイコプラズマの脂質成分の網羅的解析をおこない、非特異的な過剰刺激がなく、特異的に抗体を誘導できる成分を解明しました。この成果は、病気の発生を理解する上で重要であり、免疫応答の分子機構や免疫システムを制御することができ、かつ、非特異的な反応(副作用)がない創薬につながります。
マイコプラズマ脂質抗原 (mycoplasma lipid-antigens)
マイコプラズマ脂質抗原の研究成果から、特異的な免疫抗原としてのみでなく、病態の分子機構解明や最新の医療へつながる知見が得られてきています。
糖鎖は、受精、発生、細胞間の相互認識による組織や器官形成、ウイルスや細菌など微生物に対する免疫応答および防御機能など、さまざまな生命現象の分子機構に複雑に関与している。糖鎖をもつ分子は糖鎖複合体と呼ばれているが、主な生体分子として糖タンパクと糖脂質に分けられる。糖脂質はリン脂質などと共に、細胞の形態形成、小胞輸送、細胞内シグナル伝達など、重要な生体機能の制御に関与しています。
近年の研究で脂質抗原がNKT 細胞を介して免疫調節機構に働き感染症・自己免疫疾患・がん免疫において重要な役割を持っている事が解ってきています。
病原微生物の細胞膜にある糖脂質には、グラム陰性菌のLipopolysacharide(LPS)、グラム陽性菌のLipoteicholic Acid(LTA)、結核菌のLipoarabinomannan(LAM)などがある。LPSは、エンドトキシンなどの病因物質であり、LTAには、アジュバント活性があるため、注目されている。しかしながら、これらの糖脂質は多様であり、不溶性で精製が難しく構造も複雑であるため不明な点が多い現状です。
一方、マイコプラズマには細胞壁がなく、細胞膜が直接外界と接しているという点で特殊であり、最小の細菌である。また、マイコプラズマでは、細胞膜脂質に免疫原性があると考えられており、そこに着目して解析を進め、種特異的な糖脂質抗原を発見し、精製、構造決定および合成に成功しました。
Mycoplasma pneumoniaeからは、グリセロ型の糖脂質を基本骨格に持つ GGL Glc-typeとGGL Gal-typeの2種類の糖脂質抗原を、Mycoplasma fermentansからは脂質抗原GGPLs: GGPL-I および GGPL-IIIを発見し、いずれも人工的に合成できるようになりました。
マイコプラズマ特異的糖脂質抗原が、他の病原微生物の糖脂質と同じように、抗原性や病原性において重要な役割を持っていると考えられます。
糖脂質抗原の分子機構、免疫制御機構の解明を進めることはマイコプラズマ関連疾患の診断-予防-治療につながると考え、研究を進めている。さらに、それにより自己免疫疾患やがん等の難病の診断-予防-治療への応用につながることが期待されています。
松田和洋は、マイコプラズマ脂質抗原の研究に長く携わり、Encyclopedia of Life Science (http://www.els.net/)の中で、Immunology/ Antigen and their recognition /AntigensのLipid Antigenを執筆しています。学術レベルでの世界的な評価を受けており、事業の国際展開が可能です。
特許関連
当社は、マイコプラズマ脂質抗原関連の基本構造特許・合成特許を出願しています。マイコプラズマ脂質抗原の関連の特許を取得しています。
「マイコプラズマ感染症用ワクチン」については、エムバイオテック株式会社、国立感染症研究所、(独)産業技術総合研究所から共同出願出願しています。
- 国際公開2010/140377(WO2010/140377)マイコプラズマ感染症用ワクチン出願人:独立行政法人 産業技術総合研究所・国立感染症研究所長・エムバイオテック株式会社
- 特許番号 第4646985号 マイコプラズマ・ニューモニエのグリセロ型糖脂質抗原 (発明者:松田和洋他)出願人:エムバイオテック株式会社
- 特許番号 第3735388号新規グリセロ糖脂質とその抗体およびマイコプラズマ検出法 (発明者:松田和洋他)出願人:エムバイオテック株式会社
- 特許番号 第3551525号 ホスホコリン含有グリセロ糖リン脂質化合物 (発明者:松田和洋他)出願人:エムバイオテック株式会社
- 特開2009-007279号公報 マイコプラズマニューモニエ特異抗原糖脂質の合成方法
(発明者:西田芳弘・宮地彬・新宮佑子・松田和洋)出願人:国立大学法人千葉大学・エムバイオテック株式会社
- 国際公開2007/023583(WO2007/023583)糖脂質誘導体合成中間体及びその製造方法、並びに糖脂質誘導体及びその製造方法 (発明者:西田芳弘・中村高典・新宮佑子・松田和洋)出願人:国立大学法人名古屋大学・エムバイオテック株式会社
- 特願2008-521288マススペクトロメーターを用いた脂質抗原検出法 (発明者:松田和洋他)出願人:エムバイオ テック株式会社
- 特願2008-235783 発明の名称 Mycoplasma fermentans遺伝子、遺伝子産物およびそれらの酵素反応を用いた糖含有グリセロリン脂質の製造法(発明者:浅野行蔵 曽根輝雄 池田順子 松田和洋 佐藤征二 笹崎容子)出願人 有限会社A-HITBio・浅野行蔵・エムバイオ テック株式会社
学会発表など
- 第85回日本細菌学会総会 : シンポジウム (S3-5) マイコプラズマ感染症
Symposium (S3-5) : NOVEL SERODIAGNOSIS OF MYCOPLASMA INFECTIOUS DISEASES BASED ON LIPID-ANTIGEN TECHNOLOGIES. Kazuhiro Matsuda M Bio Technology Inc./ Keio University School of Medicine March. 27-29, 2012 Nagasaki, JAPAN
- Matsuda, K., Symposium II : Recent clinical topics and issues of Mycoplasma pneumoniae pneumonia. Is it Possible to Diagnose Mycoplasma pneumonie infection Earlier? Joint Congress of 5th AOM & 38th JSM (2011)
- 松田和洋、西田芳弘.マイコプラズマの糖脂質:マイコプラズマ感染症の予防、診断、そして治療に向けて 「糖鎖を知る」その素顔と病気への挑戦 (独)科学技術振興機構
- Matsuda, K. Novel Technologies for Mycoplasma Lipid-antigen Discovery and Vaccine Development. BIT Life Sciences’ 2nd World Congress of Vaccine. (2010)
- 第82回日本細菌学会総会
Mycoplasma fermentans生菌投与ウサギを用いた関節炎モデル開発と抗糖脂質抗体の解析佐々木裕子・永田典代・網 康至・須崎百合子・松田和洋・荒川宜親 (2010)
- 松田和洋 マイコプラズマ脂質抗原の発見およびワクチン開発の新技術 日本マイコプラズマ学会雑誌、第37号 32-34 (2010)
- Matsuda, K., Ichiyama, K., Matsuda, S., Koizumi, A., Fukuda, K., Dohi, H., Harasawa, R., Saito, A., Nishida, Y. Chemical structures, syntheses and applications of Mycoplasma pneumoniae-specific β-glycolipid antigens. 第25回国際糖質シンポジウム (2010)
- Kawahito, Y., Ichinose, S., Sano, H., Tsubouchi, Y., Kohno, M., Yoshikawa, T., Tokunaga, D., Hojo, T., Harasawa, R., Nakano, T., Matsuda, K. Mycoplasma fermentans glycolipid-antigen as a pathogen of rheumatoid arthritis. 18th Congress of The International Organization for Mycoplasmology. (2010)
- Matsuda, K. Novel Technologies for Mycoplasma Lipid-antigen Discovery and Vaccine Development. 18th Congress of The International Organization for Mycoplasmology. (2010)
- Matsuda, K. Novel Technologies for Mycoplasma Lipid-antigen Discovery and Vaccine Development. (マイコプラズマ脂質抗原の発見およびワクチン開発の新技術) 第9回バイオテクノロジー国際会議 バイオアカデミックフォーラム(2010)
- Matsuda, K. Development of diagnostic system based on Mycoplasma lipid-antigens. The 4th Academic Congress of Asian Organization for Mycoplasmology. (2009)
- 松田和洋 マイコプラズマ脂質抗原を標的としたマイコプラズマ感染症の新しい診断-予防-治療法の開発 日本マイコプラズマ学会雑誌 第36号 84-87(2009)
- 第82回日本感染症学会総会 ワークショップにて「マイコプラズマ脂質抗原を分子基盤とした診断-治療法の開発」 (2008)
- 松田和洋 マイコプラズマ脂質抗原を用いた診断システムの開発 日本マイコプラズマ学会雑誌 第35号 41-43 (2008)
- 第7回国際バイオEXPO&国際バイオフォーラム バイオベンチャーによる技術プレゼンテーション フォーラムにて「脂質抗原を用いたマイコプラズマ肺炎早期診断法の開発」(2008)
- 松田和洋、只野-有富桂子、飯田-田中直子、新宮佑子、富山哲雄、原澤 亮、森田大児、楠 進 神経障害因子誘導に関わるMycoplasma pneumonie 特異脂質抗原の構造解析 日本マイコプラズマ学会雑誌 第34号 45-46 (2007)
- Kawahito, Y., Sano, H., chinose, S., Tsubouchi, Y., Khono, M., Yoshikawa, T., Tokunaga, D., Harasawa, R., Sato, Y., Matsuda, K. Mycoplasma fermentans-specific phosphorylcholine-containing glycolipids as a pathogen of rheumatoid arthritis. ACR/ARHP Annual Sientific Meeting (New Orleans, USA) (2002)
論文など
- マイコプラズマと糖脂質:マイコプラズマ感染症の予防、診断、そして治療に向けて
「「糖鎖を知る」その素顔と病気への挑戦」 独立行政法人科学技術振興機構 p157-162 (2010) 松田和洋・西田芳弘
- マイコプラズマ脂質抗原の発見およびワクチン開発の新技術 日本マイコプラズマ学会雑誌 第37号 p32-34 (2010) 松田和洋
- マイコプラズマ脂質抗原を標的としたマイコプラズマ感染症の新しい診断-予防-治療法の開発 日本マイコプラズマ学会雑誌 第36号 84-87(2009) 松田和洋
- Enzymatic synthesis of Mycoplasma fermentans specific glycoglycerophospholipid from 1,2-dipalmitoylglycerol. 109:341-345 (2010) Ishida, N., Irikura, D., Matsuda, K., Sato, S., Sono, T., Tanaka, M., Asano, K.
- Promotion of arthritis and allergy in mice by aminoglycoglycerophospholipid, a membrane antigen specific to Mycoplasma fermentans. FEMS Immunology and Medical Microbiology. 59:33-41 (2010) Sato, N., Oizumi, T., Kinbara, M., Sato, T., Funayama, H., Seiji Sato, S., Matsuda, K., Takada, H., Sugawara, S., Endo, Y.
- Variation of genes encoding GGPLs syntheses among Mycoplasma fermentans strains. J. Vet. Med. Sci. 72: 805-808 (2010) Fujiwara, M., Ishida, N., Asano, K., Matsuda, K., Nomura, N., Nishida, Y., Harasawa, R.
- Molecular cloning and expression of novel cholinephosphotransferase involved in glycoglycerophospholipid Biosynthesis of Mycoplasma fermenatans. Curr. Microbiol. 58: 535-540 (2009) Ishida, N., Irikura, D., Matsuda, K., Sato, S., Sone, T., Tanaka, M., Asano, K.
- Synthesis and absolute structures of Mycoplasma pneumoniae β-glyceroglycolipid antigens. Carbohydr. Res. 344: 36-43(2009) Miyachi, A., Miyazaki, A., Shingu, Y., Matsuda, K., Dohi, H., Nishida, Y.
助成金プロジェクト
- 独立行政法人産業技術総合研究所バイオメディシナル情報研究センタータスクフォースプロジェクト「マイコプラズマ糖脂質を標的とした診断-治療法の技術開発」(2009年1月~2011年3月)にて、「マイコプラズマ感染症用ワクチン特許(WO2010/140377)」 出願(出願人:エムバイオテック株式会社・独立行政法人産業技術総合研究所・国立感染症研究所)
- 独立行政法人産業技術総合研究所生物情報解析研究センターとの共同研究
「マイコプラズマ特異的脂質合成酵素を標的としたリウマチ性疾患診断-治療システムの研究開発」(2006年4月~2009年3月)
- 北海道経済産業局戦略的基盤技術高度化支援事業「生体内微量物質GGPL-Ⅲの発酵生産法及び高純度化法の開発」(2006年11月~2009年3月)
- 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)産業技術実用化開発費補助事業研究開発型ベンチャー技術開発助成事業「質量分析による患者血清からの脂質抗原迅速分析システムの開発」(2006年9月~2008年3月)
- 厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究班 「Mycoplasma fermentans生菌投与ウサギを用いたリウマチ性疾患モデル開発の検討 」(2006年5月~2011年3月)
弊社は、研究開発型のベンチャー企業であり、これまで、以下のような研究開発実績があります。これまでの学術的実績をもとに、マイコプラズマ感染症に関する診断薬、創薬技術の導出や提携により、事業をおこないます。