マイコプラズマ感染症は病像が多彩である。その理由としては、マイコプラズマの種による違いは当然のことながら、同じ種であっても、感染の際の量や部位など感染様式の違いや宿主の体調や遺伝的な感染防御能力の違いなどが考えられます。
従来法では、慢性疾患での経過を追うことが難しかったため、マイコプラズマ感染と慢性疾患の関連について、長期の経過観察をおこなう研究が難しかった。なぜなら、従来法では、特異性、感度や定量性に限界があったからです。新しい検出法を用いて複雑で多彩な病状を呈するマイコプラズマ関連疾患の病態の解明をさらに進めています。
この新しい検査法を用いることにより、早期に正確な診断が可能となったといことが、最大のメリットである。リウマチ性疾患について、欧米では、感染症に関連するものを抗生剤により治療することが可能である。この検査法とこの抗生剤による治療法や概念を組み合わせることが可能であり、抗生剤治療の対象患者さんをこの検査で的確にピックアップでき、しかも治療効果の判定をより高い精度でモニター可能になりました。
広い意味での、マイコプラズマ感染症の診断-予防-治療にかかわる、企業・医療機関・研究機関などとの、連携を進めていきたいと考えています。抗菌剤の拡大を狙う製薬メーカーや新規抗菌剤の開発を目指す製薬メーカーとの提携を進めていきたいと考えています。
マイコプラズマ感染症の診断-治療を実現するためには、マイコプラズマ脂質抗原の合成、マイコプラズマ脂質抗原のリポソーム製剤化、診断システムの構築、臨床検査体制、創薬支援、創薬、臨床診療など、多くの分野との連携が必要と考えています。
したがって、診断薬のマイコプラズマ・ニューモニエの抗体診断薬の事業化をできるだけ早く推進することとともに、それぞれの分野での専門性を持った企業と提携するというアライアンスの構築が重要な経営戦略になります。国内のみでなく、欧州、米国、オーストラリア、アジアなど、海外の臨床診断薬販売や臨床治験を行う企業会社などとアライアンス構築を進めます。
当社では、マイコプラズマ感染症の診断-予防-治療システムを、患者さんおよび健常人に最もよい形で提供するために、事業化を進めています。よりよい技術を提供するために、助成金も使っての研究開発を行い、専門性の高い企業とのアライアンスにより、このシステムの全体が最適な形で構築されることを目指します。企業とのアライアンスの契約の基本になる特許については、戦略を考えて取得・維持をしていくことが重要です。また、弊社の脂質抗原に関する基本技術を応用して、他の病原微生物についての診断-予防-治療に係る技術開発やその事業化もおこないたいと考えています。
研究検査用としての抗体測定は、すでに、検査センターとの提携により開始しています。
医療機関との提携により、健診などの、自費検査が可能です。
平成21年12月、マイコプラズマ脂質抗原の研究成果をもとに、マイコプラズマ感染症の臨床疫学的な調査をおこない的確な診断-予防-治療法の確立することを目的に設立されました。脂質抗原注目した世界初の技術をもとに、マイコプラズマ感染症診療の重要性やマイコプラズマ肺炎診断のガイドラインなどを世界に向けて最先端の学術的な知見発信することが目的です。
(独)産業技術総合研究所・岩手大学・千葉大学・国立感染症研究所・京都府立医科大学・杏林大学・長崎大学・大阪南医療センター・国立東京医療センター・新潟大学・泉川病院・近畿大学医学部・慶應大学医学部・東京大学医科学研究所・社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院・エムバイオテック(株)などの専門の研究者が参加しています。
マイコプラズマ感染症は、“かぜ”の症状で発病することが多く、長引く乾性のせきを特徴としています。マイコプラズマはほとんどの人に感染し、大人まででは97%が感染し、インフルエンザと同じように免疫は一生続くものでないため、何回も感染し重症の感染を繰り返すことも多くあります。マイコプラズマ感染症についてよく知られている症状は肺炎です。マイコプラズマに感染して肺炎にまで進行するのは1-2%すぎませんが、肺炎の原因の約20%はマイコプラズマ感染によるものだといわれています。
また、感染したヒトの25%に肺以外の、皮膚炎、腎炎、関節炎をはじめ、髄膜炎や脳炎のような神経疾患に至るまでいろいろな症状が見られることが知られています。さらに、喘息・リウマチ性疾患・神経疾患など炎症性慢性疾患との関連がわかってきています。このように、慢性化し難病に至る疾患に関連しており、従来は効果のあった抗生物質に対して耐性菌が多く出現してきている事などから、早期に診断-治療することがますます重要になってきています。
難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象である130疾患のうち、多くの疾患で、マイコプラズマ感染との関連が疑われています。マイコプラズマ感染症の疫学調査をすることは極めて重要であり、難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象である、130疾患のうち、ギラン・バレー症候群、IgA腎症、側頭動脈炎、自己免疫性溶血性貧血は、そのマイコプラズマ感染後の5-10% で発病しているとの報告があります。さらに、ベーチェット病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコイドーシス、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、シェーグレン症候群、特発性血小板減少性紫斑病、悪性関節リウマチ、特発性間質性肺炎などが、マイコプラズマ感染との関連を疑われており、多くの疾患が対象と考えています。
このように、マイコプラズマ感染症の疫学調査をすることは極めて重要です。
マイコプラズマ・ニューモニエは肺炎の原因菌のひとつとして知られている微生物ですが、感染により免疫異常を引き起こし、マイコプラズマと、抗癌剤の重篤な副作用である間質性肺炎の関連についても検討していくことが重要と考えています。
さらに、マイコプラズマ・ファーメンタンスは、関節リウマチやその他のリウマチ性疾患の原因の一つではないかと報告されています。その他にも、尿道炎、不妊症など、病気との関連が証明されつつあるマイコプラズマ種が報告されており、ますます、対象疾患は増えると予想されます。
これまで、急性から慢性炎症性疾患と多彩な病像を呈するマイコプラズマ感染症は、診断が難しく、的確な予防-診断-治療が難しかったのが現状です。マイコプラズマ肺炎は、ほかの細菌と違い頑固なせきがあるが痰がなく聴診所見が乏しいなどの臨床症状と、胸部のレントゲン写真ですりガラス状といわれる特徴をもち、ほかの細菌性の肺炎と区別され非定型肺炎と呼ばれます。肺炎球菌などほかの細菌と有効な抗菌剤が異なるため、診療においてマイコプラズマ感染症であるかどうかの診断は治療方針を決めるための重要な情報です。しかしながら、これまでは特異性の高い診断薬の開発が成功していなかったので、感染状態を正確に把握せずに治療されることが多いというのが現状です。つまり、マイコプラズマ感染症の診断が遅れてなされたり、診断される前にマイコプラズマ感染症に効果がある抗生物質が投与されたりすることがよくあります。
また、現行の検査法には定量性が乏しいため、感染の経過が正確に把握されていないのも実状です。
さらに、最近、マイコプラズマ・ニューモニエに効果があるマクロライド系の抗菌剤であるクラリスロマイシンに対する耐性菌が増加しており、30%に達しているという問題があります。耐性菌に対しては、抗菌剤の効果が乏しく、重症化する可能性が非常に高く、特に小児の肺炎や髄膜炎の診断―治療を行う際には、迅速で的確な判断が必要であり、感度と特異性の高い診断法が望まれています。
マイコプラズマについては、診断のマーカーとなる特異抗原やワクチン効果をもつ抗原の特定についての長年にわたって研究されてきましたが、脂質成分の解析の難しさから実用化が遅れていました。
マイコプラズマ感染症は、感染した個人の免疫状態などによって、症状が異なるという特殊性もあり、診断-治療がむずかしく、慢性の重症な病態を引き起こした患者さんもあります。早期の軽症である時期に、診断-治療をおこなうことは、患者さんの苦痛が少なく、治療期間や治療費が少なくてすみます。さらに、ワクチンなどのより予防ができれば、健康増進につながり、医療費が削減できます。
症例 20代女性で、抗マイコプラズマ・ファーメンタンス脂質抗原抗体IgM 2.8 の慢性疲労症候群の患者さん
→2ヶ月抗菌剤を内服→関節痛、結膜炎、微熱(37℃)などが消失、白血球数1万以上が7800 に。
症例
40代女性で、抗マイコプラズマ・ファーメンタンス脂質抗原抗体IgM 0.8 の関節リウマチの患者さん、抗体医薬を2種類試みたが、症状悪化、RF 90
→2ヶ月抗菌剤を内服→関節の腫れや痛みが著明に改善。RFは陰性に。
マイコプラズマ感染症は、急性から慢性への多彩な症状を呈します。インフルエンザと比べ病期長びくという特徴がありる。したがって、抗原や菌が検出できるということより、全身状態の変化を定量的にとらえることが可能な、抗体の精密定量測定が、患者の診断や治療効果の判定には有効であると考えられます。
従来の血清学的な方法(抗体測定法)の場合は、PA法では、IgMとIgGの区別ができていないと言われています。
ICは、陰性血清でも発色法などの問題で陽性になることが指摘されており、結構あります。
また、抗原測定法や培養法は、陰性であったとしても、別のサンプリング部位で陽性になる可能性が残ってしまいます。
”感染対策に関しては、咳嗽が慢性化して、当該病棟で他人への伝播と思われる事象が
断続的に認められるという場合には非常に役に立つ。検査をしたい事例が出てきたら、連絡。”
マイコプラズマ脂質抗原抗体側手は、マイコプラズマの活動状態(病勢)と並行に推移するため、病勢のモニタリングにも有用な検査です。
マイコプラズマ脂質抗原抗体検査は、従来の方法と比較して、はるかに感度・特異性・定量性に優れた検査です。
特に、抗体量が0であれば、間違いなく陰性と判断でき、IgMおよびIgGの抗体量を、それぞれに、精密定量的に測定可能です。
PA法はIgMとIgGの区別ができない、イムノカードでは偽陽性が多い、などでの定量性や非特異反応の問題がありません。
したがって、喘息を発症する症例、多形滲出性紅斑となるような症例、或いは関節炎となる症例など多彩な病変について、抗体を測定して経過を追うことで、関連を示し、的確な治療へ結びつけることが期待できます。
これまでの臨床病院との共同研究では、喘息の患者さんで、抗マイコプラズマ・ニューモニエ脂質抗原抗体IgMが高値で、IgGは陰性である患者さんもあります。ホームページには、自費検査が可能なクリニックを記載しております。
まだ、保険適応外の自費検査ですが、希望される患者さんがありましたらご紹介ください。
また、肺炎の症状が顕著でない症例、たとへば、髄膜炎や腎炎から発症する症例なども、検査により原因がマイコプラズマであることをとらえ、的確な治療へ結びつけることが期待できます。
検体の受け取りや結果のお知らせは、大手検査センターにお願いしています。
① 提携医療機関になっていただければ、自費検査として使っていただくことができます。慎重に診断・治療に応用するために、この場合も共同研究として、主治医の先生と密に連絡を取っております。
②大学病院や総合病院などでは、通常、自費診療をおこなっておらず、別の対応もおこなっております。共同研究として、検体を送っていただき、測定を行うことが可能です。この場合も、分析センターで測定しますので、測定の費用を病院の研究費から出していただいているところもあります。
小児の難病について、マイコプラズマ感染症に起因するものを早期に診断し治療することが、早く臨床の現場に届けられるようにしたいと思います。
費用のことがありますので、今後、公的な助成金などが使えるようにしていければと思っております。
現時点では、費用のご負担などが可能でしたら、上記の①や②の方法で、手続きなどについてお打ち合わせをさせていただきたいと思います。
慢性疲労症候群や膠原病、関節炎、不妊と、マイコプラズマ感染症について