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  マイコプラズマ感染症    成人マイコプラズマ肺炎    
           
   

マイコプラズマ感染症



“かぜ”症状で発病する感染症の病原菌で、肺炎では3番目、急性気管支炎では1番目に多いとされています。特に、肺炎は日本人死因の第3位を占め、生活習慣病に次ぎ重大な社会問題ともなっています。

従来は効果のあった抗生物質に対して耐性菌が多く出現してきている事などから、確実に、早期に診断-治療することがますます重要になってきています。2000年にマクロライド系抗生物質への耐性菌株が日本の研究者により分離されて以降、耐性率は上昇を続けている。世界的も増加を続けています。

2011年は6月頃より患者数の増加が報告され、過去10年間で最多の感染者数が報告されています。報告数増加の要因は、迅速診断キットの普及や報告対象になっている基幹定点病院に入院を要するような重症例の増加、更に原因菌の耐性化などが挙げられています。

さらに、マイコプラズマ感染症の特徴は、感染したヒトの25%に、肺以外の疾患、つまり、皮膚炎、腎炎、関節炎、また神経症状を呈する髄膜炎や脳炎のような多彩な疾患の原因になり得ることです。経過もさまざまであり、急性期のみの症状から、難病(喘息・リウマチ性疾患・膠原病・神経疾患)も含む慢性炎症性疾患までの幅広い病像を呈するため、原因の特定が困難な場合も少なくありません。難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象である130疾患においても、多くの疾患で、マイコプラズマ感染との関連が疑われています。

したがって、慢性化し難病に至る疾患に関連しているマイコプラズマ感染を、いかに正確に、早期に、発見・診断し、有効な抗生剤療法の適応患者さんを治療に繋げられるかが非常に重要なポイントとなります。
   

病原性マイコプラズマ




マイコプラズマは細胞壁を欠く細菌であり球形(125~250nm)から繊維状(150μm)と多様な形態を示し、細胞外で自己増殖可能な最小の細菌である。その増殖にはコレステロール長鎖脂肪酸を要求する。ウイルスと異なり、人工の無細胞培地で増殖できる最小の病原微生物。

病原体は、粘膜表面の細胞外で増殖する。増殖の結果、気管、気管支、細気管支、肺胞などの気道粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮が顕著に破壊され、粘膜の剥離、潰瘍の形成がみられる。確定診断の遅れにより重症化することもある。成人は重症化リスクが高く重症化すると胸水貯留、呼吸不全を引き起こす可能性がある。

普通の細菌と異なり、細胞壁を持たず、 3層の限界膜をもっており、ペニシリン系やセフェム系などの抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が有効。

マイコプラズマは気管線毛上皮細胞に付着して増殖し、下気道粘膜上皮を破壊する。普通の細菌と異なり、細胞壁を持たず、 3層の限界膜をもっており、ペニシリン系やセフェム系などの抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が有効

マイコプラズマ肺炎は小児・若年成人に多発。乳幼児にも感染するが、肺炎になることは少なく、風邪や上気道炎で終わることが多い。5歳以上になると肺炎症状がでてきます。感染後に無症状の保菌状態が続く。感染後、免疫は長続きしない。したがって、再感染する。

感染力は強く、マイコプラズマ肺炎患者の気道分泌物中にマイコプラズマが咳によって飛沫となって経気道感染をおこす。1~2 m程度の距離で人から人に飛沫感染するために、学校や職場などの狭い範囲で流行がみられる。

病原体が気道粘液(痰)に排出されるのは発症前2~8日から起こり、臨床症状発現時に最大となり、高いレベルの排出が1週間程度続き、徐々に減少しながら4~6週間以上病原体の排出は継続する。

肺炎が流行する季節は秋から冬。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では五類感染症に指定。
肺呼吸器系の症状のみでなく、発疹、筋肉痛、関節痛、髄膜炎などの全身症状がある。また、まれではあるが、喘息・神経疾患・関節リウマチ症状への移行が知られている。

難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象である130疾患のうち、多くの疾患で、マイコプラズマ感染との関連が疑われている。

1~2 m程度の距離で人から人に飛沫感染するために、学校や職場などの狭い範囲で流行がみられ、マイコプラズマ感染症の疫学調査をすることは極めて重要。

マイコプラズマ肺炎(非定型肺炎・異型肺炎)




初期症状は、風邪症候群様の症状を呈し、発熱、疲労感、頭痛、のどの痛み、消化器症状、咳、発疹など。症状は個人差が大きく咳は、発症初期は乾いた咳で有るが、時間の経過と共に咳は強くなり、解熱後も1ヶ月程度続く。年長児や青年では、後期には湿性の咳となることもある。

合併症として中耳炎、関節炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、心筋炎、溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などがある。

【潜伏期】

潜伏期は2~3週間程度。潜伏期とは体の中にマイコプラズマが侵入してから症状が出てくるまでの期間。マイコプラズマ感染症の人と接触してもすぐに症状が出てくるのではなく、2~3週間の間をおいて症状が出てくる。

【症状】


発熱で発症し、1~2日遅れて咳が出てきて、だんだん強まっていく、というのが典型的な経過。マイコプラズマ肺炎の症状としては,初期症状は普通の風邪と変わりないことが多く、咽頭痛、全身倦怠、筋肉痛、発熱が最も多い。その後に、自制できないほどの頑固な咳が続くことが多いのが特徴で。 咳は最初は空咳、だんだん痰がからんでくる。痰は少ないかあっても膿性ではない。感染を受けた人すべてに発症するわけではなく、約3~10%に発症するとされている。

【マイコプラズマ肺炎を疑う所見】



  • ①家族内にマイコプラズマ感染症の人がいる場合
  • ②保育園や幼稚園でマイコプラズマ感染症が流行している場合
  • ③長期間せきが続く場合
  • ④喘息児が気管支拡張薬などの治療にもかかわらず喘鳴が長引いたり、発作を繰り返す場合
  • ⑤セフェム系抗生物質を使用しても発熱や咳嗽がなかなか治らない場合
       

【マイコプラズマ肺炎の診断】



  • 診断は、抗マイコプラズマ抗体の上昇で確定診断になる。抗マイコプラズマ抗体の特異性が低いためより特異性の高い診断法が望まれている。胸部X線写真は区域性の所見を示さず、すりガラス状の間質性陰影を見ることが多い。飛沫感染するので家庭、学校、職場で流行しますので、流行が診断の助けにもなる。
   
       

【検査】



  • 検査は、血液検査では寒冷凝集反応や抗マイコプラズマ抗体の上昇を見る。(IDWR:感染症の話)
  • 肺炎があるかどうかは胸部XPで確かめる。胸部XPの陰影で(非定型肺炎)、マイコプラズマ肺炎かどうかの予測はつくが、中にはウイルス感染でも同じような像を呈することがある。白血球数は正常のことが多いが、中には10000~15000程度の軽度の上昇を示すこともある。ルーチン検査の喀痰培養検査でも検出できないので参考にならない。CRPは軽度上昇を示すことが多いが、陰性のこともある。
   
       

【合併症】



  • 喘息の既往のある子供は喘息発作が生じたり悪化したりするので注意が必要。高熱のためにけいれんが誘発されることもある(熱性けいれん)。発疹が出現すること、中耳炎が合併することもある。肺炎マイコプラズマは心筋炎、心外膜炎、腎炎、中耳炎、鼓膜炎、多形紅斑(かなり多い)、ステーブン・ジョンソン症候群、髄膜炎、脳炎、多発神経炎、寒冷凝集素症、血小板減少症など多彩な病変を起こすこともある。
   
       

【治療】



  • マイコプラズマが細胞壁を持たないのでβ-ラクタム系やアミノグリコシド系等の細胞壁合成阻害薬は無効である。マクロライド系、テトラサイクリン系、ケトライド系を第一選択薬とする。 マクロライド系の抗生物質、エシノール、クラリス、ジスロマックなどから選択し。最近、耐性菌の出現が問題となってきている。
  • マイコプラズマには通常外来で処方されることの多いセフェム系抗生物質が効かない。逆にマイコプラズマに効果のあるマクロライド系抗生物質は細菌に対する効きが弱い。そのために、症状を起こしている病原体がマイコプラズマなのか、細菌なのか、ウイルスなのかはお子さんの治療を行っていく上で問題となる。
   
       

【予防】



  • 患者の鼻やのどからの分泌物に触れたり、飛沫を吸い込だりすることによる感染がありますので、手洗いやうがいも有効。また、患者との濃厚な接触を避けることも大事。発病前1週間~発病後10日程度が、感染力がある期間といわれている。登校登園については急性期が過ぎて症状が改善し、全身状態の良いものは登校可能。
   
       

【経過】



  • 一般に予後は良好。しかし、咳嗽が長引くことが多く、1ヶ月以上続くことも珍しくありませんし、レントゲンの肺炎像が改善するのに1~2ヶ月かかることもあります。
  • 一度かかっても再度発病することがあり、一生免疫ができるとは限らない。
  • 経過中に発熱が続き、嘔吐、頭痛等がみられる場合は髄膜炎を合併を考える。他に中耳炎、尿道炎、肝炎などが報告されている。成人より小児に合併症の頻度が多いとされている。
   
           



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