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皮膚疾患 |
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皮膚疾患とマイコプラズマ感染症 |
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スティーブンス・ジョンソン症候群とマイコプラズマ感染
スティーブンス・ジョンソン症候群は、厚生労働省の指定難病のひとつであり、高熱とともに口唇、口腔、眼の結膜、外陰部に高度の発赤、びらん、出血などの粘膜病変、さらに全身の皮膚に紅斑、水疱、びらん、などが認められる重篤な全身性疾患です。
初期症状は発熱、咽頭痛などの風邪症状です。高熱、全身倦怠感、食欲低下などの全身症状がみられます。進行すると紅斑、水疱、びらんが、皮膚や粘膜の大部分の部位に広く現われ、中毒性表皮壊死症 (TEN)と診断されます。また、皮膚だけでなく、目などの粘膜にも症状が現れ、失明したり、目に後遺症が残ったりすることがあります。
その多くは薬剤が原因で発症する最重症型薬疹の一つと考えられていますが、ウイルスや肺炎マイコプラズマ感染に伴っても発症します。
スティーブンス・ジョンソン症候群という病名は、アメリカの2人の小児科医師、アルバート・メイソン・スティーブンスとフランク・チャンブリス・ジョンソンが、1922年にAmerican
Journal of Diseases of Childrenに報告したことに由来します。
スティーブンス・ジョンソン症候群は、皮膚粘膜眼症候群、あるいは重症型多形滲出性紅斑と同義語とされています。多形滲出性紅斑には、病変が皮膚のみに限定する軽症型と、全身症状や粘膜や眼の症状を伴う重症型があります。つまり、重症型の中で、水疱、びらんなどの表皮剝離体表面積が
10%未満のものをスティーブンス・ジョンソン症候群、10%以上のものを中毒性表皮壊死症 (TEN) とされています。
治療については、早期診断と早期治療が大切です。スティーンス・ジョンソン症候群の治療は、まず感染の有無を明らかにする必要があります。次に原因として疑われる薬剤を中止し、原則として入院の上、加療されます。
いずれの原因においても、発疹(ほっしん)部の局所処置に加えて厳重な眼科的管理、補液・栄養管理、感染防止が重要です。治療指針としてはステロイド薬の全身投与を第一選択とします。重症例においては発症早期、発症7日前後までにステロイドパルス療法を含む高用量のステロイド薬を開始し、発疹(ほっしん)の進展がないことを確認して減量を進めます。さらにステロイド薬投与で効果がみられない場合には、免疫グロブリン製剤大量静注療法や血漿交換療法を併用されます。
予後については、多臓器不全、敗血症などを合併することがあり、死亡率は約3%です。失明による視力障害、瞼球癒着、ドライアイなどの後遺症を残すことが多く、閉塞性細気管支炎による呼吸器傷害や外陰部癒着、爪の甲の脱落、変形を残すこともあります。
スティーンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症、TENとの合計患者数は、平成 24 年度医療受給者証保持者数で、 59 人です。
発症機序については、免疫的な反応が示唆されていますが、不明とされています。
スティーブンス・ジョンソン症候群は、多形滲出性紅斑の重症型と考えられています。多形滲出性紅斑は、マイコプラズマ感染症ではよく診られる典型的な皮疹です。また、マイコプラズマ感染症による、スティーブンス・ジョンソン症候群や、中毒性表皮壊死症
TENについても多くの報告があります。
このように、マイコプラズマ感染症では、軽症から重症の多型滲出性紅斑がみられることが知られています。薬の服用の前にかぜ症状がある場合などは、特に、マイコプラズマ感染症についても疑う必要があります。
また、マイコプラズマ感染症は、呼吸器症状が顕著でない場合がありますので、注意が必要です。
薬による薬疹か、それとも、マイコプラズマ感染症かで、治療方針が大きくことなってきます。
したがって、皮膚科領域では特に、原因についての検討が重要な臨床ポイントとなります。原因を取り除く治療か、免疫を抑制するステロイドなどの対症的な治療か、治療方針の重要な分岐点です。
しかしながら、従来の診療プロトコールでは対応できていないという問題があります。
従来の検査法では、残念ながら限界があり、網羅的な疫学調査は困難でした。急性の肺炎など呼吸器症状の一部にしか対応できていません。また、繰り返し感染、慢性感染に対しては、培養法や遺伝子診断からは対応が困難です。実際、対応できていません。
PCR・LAMP法によるマイコプラズマ遺伝子の検出は、検体の採取や保存状態の問題もあります。咽頭などからの検体の採取では、不顕性感染、慢性化マイコプラズマ感染症や呼吸器以外での全身症状に対応できていません。重篤な状態になりつつある場合もあり早急な対応が望まれるところです。
慢性感染による炎症の持続や繰り返しによる組織の破壊や線維化(膠原病化)が進行する前に、できるだけ早く診断し治療する必要があります。しかし、従来の診断薬に限界があるため、急性から慢性化していくマイコプラズマ感染症にたいしては、診断-予防-治療が適切におこなえていない現状にあります。
マイコプラズマ感染による、小児の免疫難病、川崎病の報告もあります。
マイコプラズマ感染症は、行政による対策も、強く望まれる感染症です。感染状態を的確に把握した疫学調査、診断予防早期治療に向けての仕組みづくりが必要です。
マイコプラズマ感染症は、呼吸器感染症、特に肺炎が特徴として診断されています。しかし、呼吸器症状が顕著でなく発症する無菌性髄膜炎について知られています。したがって、呼吸器症状が主訴でなくても、スチィーブンス・ジョンソン症候群が疑われたときは、マイコプラズマ感染症を念頭に置いた医療体制を、今後、整えていく必要があります。
耐性菌の出現も知られており、的確な感染状態の把握に基づいた治療プロトコール、が望まれています。
マイコプラズマ感染症の流行時には、無菌性髄膜炎や多型滲出性紅斑など、肺炎や気管支炎以外の症状で発症するため、診断の見逃しに注意が必要です。より信頼性の高い、マイコプラズマ感染症脂質抗原抗体検査が必要となってきます。
中毒性表皮壊死症、TENは、類似症状を示す疾患としてブドウ球菌性中毒性表皮壊死症、SSSSや輸血後の移植片対宿主病などもあります。
また、薬剤の重篤な副作用の一つ間質性肺炎もマイコプラズマが原因の一つです。これらについても注意が必要です。ここも、的確な原因探索・診断と治療が重要な臨床ポイントです。
マイコプラズマ肺炎のガイドラインに続いて、マイコプラズマ感染症のガイドラインについて検討していくことも必要と考えています。
最近、世界最先端技術によりマイコプラズマ脂質抗原抗体検査が可能になり、急性から慢性期における抗体変化の把握ができるようになってきています。マイコプラズマ感染症を早期に発見し治療していくことで、免疫難病や早期認知症の予防や治療につながり、未病医療に必要なアプローチと考えます。今後の展開が期待されています。
この技術は、ワクチンなどの創薬に繋がります。マイコプラズマについては、薬剤耐性菌が多く出現していることが知られており、治療プロトコール、さらには、ワクチンの開発が望まれるところです。
マイコプラズマ感染症についての予防医療・先端的医療、マイコプラズマ感染症の難病化の予防にむけて、マイコプラズマ感染症医療ネットワークの構築など、今後、医療経済的にも社会インフラの整備として必要と考えています。
また、マイコプラズマ感染症は、呼吸器感染症ででもあり、飛沫感染をするため、国レベルの、さらに、国際的な対応が必要です。より信頼性の高いマイコプラズマ感染症サーベイランスシステムの構築に向けて、新しい信頼性の高い抗体測定法の導入が強く望まれます。
現在、5類感染症として、定点医療機関にて、マイコプラズマ肺炎の報告が義務づけられています。しかしながら、マイコプラズマ感染症は、肺炎症状がなく、スティーブンス・ジョンソン症候群、川崎病や無菌性髄膜炎の原因になるため、発疹(ほっしん)や無菌性髄膜炎の発症状況の的確な把握の可能なサーベイランスシステムの構築が急務と考えています。
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川崎病とマイコプラズマ感染症
マイコプラズマ感染による、小児の免疫難病、川崎病の報告もあります。
スチィーブンス・ジョンソン症候群、特に、目粘膜型は、川崎病との区別が困難であることから、小児では川崎病が疑われた時も原因としてマイコプラズマ感染症を念頭に置く必要があります。免疫抑制治療は間違った方向の治療にもなりえます。的確な原因探索・診断と治療が重要な臨床ポイントです。
川崎病(Kawasaki disease, KD)は、おもに乳幼児にかかる全身の血管炎症候群。主に中型の血管が全身性に炎症を起こすことで、発熱、発疹、冠動脈病変など様々な症状を惹き起こす。小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(英:
MucoCutaneous Lymph-node Syndrome, MCLS)とも言われる。
発症年齢は4歳以下が80%以上を占め、特に6ヶ月〜1歳に多い。罹患患者の2〜3%に再発があります。
2004年には患者数10,000人を越え、2008年の患者数は11,756人が報告されています。また、2008年は、10万人当たりの罹患率(0〜4歳児)も上昇傾向で、218.6人と最高値をを記録しています。
今のところはっきりとした原因は特定されていないが、夏と冬に多く地域流行性があることから何らかの感染が引き金となって起こる可能性が示唆されています。マイコプラズマ感染による川崎病についての報告ありますが、マイコプラズマの流行も2相性があるといわれていますので、この点では一致します。
全身の血管、中小動脈への炎症により自己免疫のような血管炎が誘発されます。病理組織上は血管壁に、好中球や、マクロファージ、リンパ球を認め、これらの炎症細胞が血管壁を破壊することにより、冠動脈の拡張、四肢末端の浮腫がひきおこされるのだろうといわれています。
初期は急性熱性疾患(急性期)として全身の血管壁に炎症が起き、多くは1〜2週間で症状が治まるが、1ヶ月程度に長引くこともあり、炎症が強い時は脇や足の付け根の血管に瘤が出来る場合もあります。心臓の血管での炎症により、冠動脈の起始部近くと左冠動脈の左前下行枝と左回旋枝の分岐付近に瘤が出来やすく、急性期の血管炎による瘤の半数は、2年以内に退縮(リグレッション)するが、冠動脈瘤などの後遺症を残す事があるといわれています。
主要症状は以下の6つです。
1.5日以上続く原因不明の発熱(ただし治療により5日未満で解熱した場合も含む)
2.両側眼球結膜の充血
3.四肢の末端が赤くなり堅く腫れる(手足の硬性浮腫、膜様落屑)
4.皮膚の不定型発疹
5.口唇が赤く爛れる、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
6.有痛性の非化膿性頸部リンパ節腫脹
以上6つの主要症状のうち5つ以上を満たすものを本症と診断しますが、5つに満たない非典型例も多い。
発熱、発赤、リンパ節腫脹などは乳幼児期のウイルス感染やマイコプラズマ感染症でも認めることがある症状であり、確定診断には困難を伴う。
マイコプラズマ感染症で診られるスティーブンスジョンソン症候群の目粘膜型は、臨床的に、川崎病と区別が難しい疾患の一つです。
初期治療としては免疫グロブリンとアスピリンを併用される。不応例には免疫グロブリンの再投与を行うか、ステロイドパルス療法が有用な例も報告されている。病初期から、免疫グロブリンとアスピリンに加え、プレドニゾロンを投与すると冠動脈瘤の抑制に有用であると言った臨床試験の報告もあるが増悪するともいわれています。
5日以上持続する発熱が診断基準の1つとなっているものの、他の診断項目から明らかに川崎病と医師によって診断される場合には発熱5日まで治療開始を待つ必要はない。遅くとも発症7日以内に治療開始することが望ましいとされています。
発症から1〜3週間後ぐらいに10〜20%の頻度で冠動脈に動脈瘤が認められ、まれに心筋梗塞により突然死に至ることがある。冠動脈瘤の約半数は、1〜2年程度で退縮(リグレッション)するが、残りの半数は退縮せず残る。冠動脈障害が治った場合でも、冠動脈の状態は成長と共に変化し心臓障害のリスクが高くなります。
マイコプラズマ感染による川崎病では、ミノマイシンなどの抗菌剤の早期投与が有効であるという報告があります。川崎病と診断された358名のうち5名が肺炎を発症し、そのうち12名(22.2%)がマイコプラズマPA法で陽性(640倍以上)となったと報告されています。320以下の偽陰性や、肺炎のような著明な呼吸器症状がない患者も想定され、実際にはもっと多いと推測されます。
ステロイドなどによる免疫抑制は、逆に増悪させる可能性もあり、より早期の的確な診断法の確立が強く望まれています。
Mycoplasma pneumoniae infection in patients with Kawasaki disease.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21738542
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多型滲出性紅斑とマイコプラズマ感染
マイコプラズマ感染症の流行時には、無菌性髄膜炎や多型滲出性紅斑など、肺炎や気管支炎以外の症状で発症するため、診断の見逃しに注意が必要です。より信頼性の高い、マイコプラズマ感染症脂質抗原抗体検査が必要となってきます。 |
重症多形滲出性紅斑とマイコプラズマ感染
スティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症では薬剤や感染症などが契機となり、免疫学的な変化が生じ、皮膚・粘膜に重篤な病変がもたらされると推定されています。
薬剤では消炎鎮痛薬、抗菌薬、抗けいれん薬、高尿酸血症治療薬などが原因となりやすい。
感染症ではマイコプラズマ感染やヘルペスウイルス感染などが誘因となります。 |
スティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症
皮膚病変は、大小さまざまな滲出性(浮腫性)紅斑、水疱を有する紅斑~紫紅色斑が全身に多発散在する。紅斑は融合・拡大し、時に表皮の剥離をきたします
。水疱は破れてびらんとなる。粘膜病変:口唇・口腔粘膜、鼻粘膜に発赤、水疱が出現し、水疱は容易に破れてびらんとなり、血性痂皮を付着するようにななります。
眼では眼球結膜の充血、眼脂、偽膜形成などが認められる。外陰部、尿道、肛門周囲にはびらんが生じて出血をきたす。時に上気道粘膜や消化管粘膜を侵し、呼吸器症状や消化管症状を併発します。
難病情報センター Japan Intactable Diseases Information Center |
副鼻腔気管支症候群:多型滲出性紅斑・咳喘息・アトピー咳嗽
気管支拡張症・副鼻腔炎とマイコプラズマ感染
Meyer Sauteur PM, Gansser-Kalin U, Lautenschlager S, Goetschel P. Fuchs syndrome associated with Mycoplasma pneumoniae (Stevens-Johnson syndrome without skin lesions). Pediatr Dermatol. 28:474-476. (2011)
Tsai V, Oman J. Stevens-Johnson syndrome after mycoplasma pneumoniae infection. J Emerg Med. 40(3):324-327. (2011)
Cherry JD. Anemia and mucocutaneous lesions due to Mycoplasma pneumoniae infections. Clin Infect Dis. S47-51. (1993) |
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